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2019/03/10 15:49


Harrison Fiennes
ハリソン・ファインズ (考古学者 / 冒険家)
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ーまずは取材を受けてくださったことに感謝しますファインズさん。
あの一件以来、あなたは表舞台から姿を消してしまいました。
まずは当時のことを振り返ってみたいのですが。

「ああ、構わないよ。始めてくれ。」

ー当時、あなたはニコの存在を証明すべく、生息地発見のための長期調査に向かった。
その時のクルーはわずか5名。現地で手配したガイドを入れて7名ですね。

「ああ、そうだ。」

ー途中ガイドに手紙を託して別れた後、あなたたちは更に奥地へと前進しています。
二人と衝突があったのはその後ですね?

「極限状態に長く身を置くと人には様々な変化が現れるものだ。
マリーも過酷な環境に耐えられず、徐々に精神に異常を来たし始めていた。
ルイスが退却を強く主張し始めたのはその為さ。」

ーしかしあなたはそれを退けた。

「私には確かな確信があったのさ。
ニコの生息地であるエリアは、もうすぐそこだとね。」

ー過度に過酷なスケジュールに、人命より名声を選んだと非難の声が上がりました。
二人が姿を消したときのことを聞かせてもらえますか。

「ルイスと激しく口論になった次の日の朝、我々が目を覚ましたときには二人の姿は無かった。
二人分の物資と供にね。二人は先にキャンプへ退却したのだと思った。」

ー二人を捜索することはしなかったのですか?

「もちろん探したさ。だが、それに長い時間を掛けるわけにもいかなかった。
これ以上体力と時間を消費し、隊全体を危険に晒すことはできなかった。
私は捜索を打ち切り、隊を前へと進める判断を下したんだ。」



ー分かりました。では、二人が居なくなった後の出来事を聞かせてください。

「私たちはすでにニコの生息地であろう地点まで辿り着いているはずだった。
すべてのデータが合致し、仮説を裏付けるものも存在した。
だが、何日調査を続けても、何故か彼らの群れを発見することはできなかった。
長い時間が経過し、仮説への自信も揺らぎ始めたときだったよ。
何度となく確認したはずのそこで、遂にニコの集落を発見したんだ。」

ーニコの集落は、予測どおりのエリアに存在した?

「エリアまで特定できていながらなかなか発見に至ることができず苦労したが、
やはり私の仮説は間違っていなかった。ニコは実在する生物だったのさ。
ひとつの巨木を囲むようにぶら下がる複数の巣、そしてそこで暮らすニコたちの姿。
私は心が震えたよ。」



ー絵本のような世界が現実としてあったと。

「その通り。」

ーもしそれが本当ならば、世紀の大発見ということになりますが。

「きみもニコの絵本は小さい頃に読んだことがあるかい?
実際のニコはかなり知能の高い生物であることは確かだ。
家族、村単位の社会性を持って生活していて、原始的な農耕を行っている痕跡や
幾つかの鳴き声で意思の疎通を図っている様子も確認できた。」

ー絵本のように人語を話すわけではないのですね。

「人語を理解するだけの知能はあるかもしれないがね。
それから私たちはニコの生態の観測を行い、充分なデータを収集した。」

ーあなた方の発見は世界を騒がし、あなたは一躍ヒーローになっていたかもしれません。
一切の調査報告をせずに学会を去ったのは、世論の激しい非難があったからですか。

「私がクルーの安否よりニコを優先したのは事実だ。
その責任を言い逃れるつもりはない。」

ー・・・このインタビューを公表しても?

「『絵本に取り憑かれた妄想狂の殺人鬼』の再来か?
当時ほどゴシップ誌も面白がってくれるとは思わんがね。君に任せるよ。」

ー今後ニコの研究は続けられるのでしょうか?

「研究者として彼らを世間に解き明かすようなことはもうないだろう。
いっそ作家にでもなってニコの絵本の続きでも書いてみるかな。」


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【ウェルモ & ニコ レポート 1 】ハリソン・ファインズ (考古学者 / 冒険家)
【ウェルモ & ニコ レポート 4 】近日公開
【ウェルモ & ニコ レポート 5 】近日公開




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